現在の認知症患者の看護は2008年に厚生労働省が発表した、安心と希望の医療確保ビジョンに基づいて取り組まれています。これは、従来の治す医療という概念だけではなく、医療支援を通じて患者の病気と生活を支える医療という行い方です。
診療を受ける患者は増加傾向にありますが、在院日数は短くなっています。その理由は医療の進歩です。そのため、患者の治療が終われば在宅医療の看護へと切り替わります。内閣府や厚生労働省が行った調査によると、家族による介護や自宅での療養を希望する認知症患者が増えているということです。

国の規定では、認知症患者を訪問看護する訪問看護ステーションの在籍数は、常勤換算で看護師と保健師、准看護師が2.5人以上必要です。全国の訪問看護ステーションの数は2013年から増え続けており、2017年04月時点で約9.7施設となっています。
ただ問題なのは、看護職員数が伸びないことです。2015年の厚生労働省の調査では、1施設あたりの常勤換算看護職員数が平均で4.8人となっています。在宅療養する認知症の患者にとって訪問看護ステーションはなくてはならないものです。しかし全体の現実を見てみると、常勤換算看護職員数5人以下の施設は約66パーセントで、5人以上の施設が約34パーセントとなっています。さらに、訪問看護ステーションの中には赤字経営の施設もあります。その理由は施設の利用者を獲得できないことであったり、募集をしていても訪問看護師が不足し続けていたりすることも原因なのです。